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最高裁判所第一小法廷 昭和53年(あ)657号 決定 1979年3月28日

本店所在地

北海道苫小牧市新中野町二丁目一番一八号

大成観光株式会社

右代表者代表取締役

兼松晴

本籍・住居

北海道苫小牧市新中野町三丁目二番一三号

会社役員

兼松晴

昭和六年九月一日生

本店所在地

札幌市中央区北二条西一四丁目二番地の二

白熊総業株式会社

右代表者代表取締役

阿部ミヨ

本籍

札幌市白石区菊水五条二丁目二番二六

住居

同 南区真駒内南町四丁目三番地の四

会社役員

阿部伸一

昭和一三年一一月二三日生

本店所在地

札幌市中央区南一〇条西一〇丁目一二六九番地

有限会社宝第一商事

右代表者代表取締役

高橋勇

本籍

北海道室蘭市母恋南町一丁目二六番地

住居

札幌市中央区南九条西四丁目一番地の二

会社役員

高橋勇

昭和五年一一月二一日生

右大成観光株式会社に対する農地法違反、法人税法違反、兼松晴に対する農地法違反、法人税法違反、詐欺白熊総業株式会社、阿部伸一に対する農地法違反、有限会社宝第一商事、高橋勇に対する農地法違反幇助各被告事件について、昭和五三年三月二三日札幌高等裁判所が言い渡した判決に対し、各被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人林信一の上告趣意は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、いずれも刑訴訟法四〇五条の上告理由にあたらない。

よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 戸田弘 裁判官 団藤重光 裁判官 藤崎萬里 裁判官 本山亨 裁判官 中村治朗)

○昭和五三年(あ)第六五七号

被告人 大成観光株式会社

同 兼松泰晴

同 白熊総業株式会社

同 阿部伸一

同 有限会社 宝第一商事

同 高橋勇

弁護人林信一の上告趣意(昭和五三年五月二三日付)

原判決には判決に影響を及ぼすべき法令の違反があるか又は事実誤認がある。破棄しなければ著しく正義に反する。

第一点 法令違反-農地法違反 その一、

原判決は農地法違反につき、被告人らに要件事実の認識があれば足り、違法性の認識までは必要なく、仮りに過失を必要としても被告人らは農地についての認識があつた、と判旨した。

然しながら右は犯意についての解釈を誤つた違法があるものである。即ち弁護人が控訴趣意書で詳細に述べたように、本件証拠に徴すれば当時の異常な土地ブームにあつて、被告人らはいづれも、本件土地取得行為が、農地法の適用から解放され、許容されるものと信じてなしたものであることは明白である。このように信ずることに過失のないことも、当時の過熱した状況下にあつては已むをえないものとして、十分に肯認されるところである。

原判決はこの点において破棄されなければならない。

第二点 事実誤認-農地法違反 その二、

原判決は白熊総業がその仲介業者としての責任を明確ならしめるため売買当事者となつたものであるから、二個の売買当事者として刑責に問われること、従つて被告人高橋もまた右二個の幇助罪に当ると、判示した。

然しながら、原判決も認定しているように白熊総業が右二個の売買契約の買主及び売主と表示したのは「仲介業者としての責任」を明確ならしめるために過ぎない。それは文字通り仲介業者としてであつて、土地を自ら取得したり、自ら権利を移転するためではない。株式会社大成総業から三国興産株式会社への本件土地移転を確実ならしめるため、丸紅株式会社(三国興産の親会社)の指示により不動産仲介業者として名を表示したに過ぎないのである。

してみると白熊総業は右大成総業-三国興産間の売買につきたかだか幇助犯としての刑責を問われるに過ぎない。

原判決は右事実の認定を誤つた違法あるか、農地法三条の解釈を誤つた違法あるものである。

第三点 法令違反-詐欺

原判決は被告人兼松の犯意につき、損害を与えることがあるとの認識は必要ない、と判示した。

然しながら、本件各約束手形が「満期に確実に決済される」と確信し、かつかく信ずることに過失がなかつた被告人には、不法に財物を領得するという犯意のないことは明白である。

原判決の判断は犯意の解釈を誤つた違法がある。

第四点 事実誤認-法人税法違反

原判決は、弁護人の控訴趣意第三点及び弁論要旨二、の主張を排斥した。

然しこれまた簾舞土地の利益配分金の所得の時期及び成田鉄工による金五千万円の没収の事実認定を誤つたものといわなければならない。

(1) 大成観光に対する簾舞土地の利益配分金の発生したのは本件ほ脱の事業年度の終期の翌日である五月一日であることは、本件各証拠上誠に明らかである。北興信用商事はたとえ成田から四月二八日に手形決済の連絡があつたとしても、自己の持出先銀行に入金の案内がない限り、大成観光に利益配当をなす債務は発生しない(即ち大成観光は右配当請求権は発生しない)。入金案内が北興信用商事にあつたのは五月一日のことである。

(2) 五千万円が成田によつて没収されたことはこれまた控訴趣意書第三、三で述べたとおりである。

右事実を認定しなかつた原判決は事実誤認のそしりを免れない。

以上

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